普洱茶のウンチク

これらの情報は、現地でフィールドワーク研究を数年間行った民族研究家の研究成果と、雲南茶研究会の皆さんによって公開されたものです。
普洱茶はまだ未知の部分が多いお茶ですが、今後、更に研究が進むことが期待されています。
この情報が普洱茶を勉強している方の参考になれば幸いです。

普洱茶の分類

製造法による分類

普洱茶は製造方法によって、まず生茶(青餅)熟茶(熟餅)の二種類に分けられます。

生茶・青餅

雲南の釜炒り日干し緑茶を原料に、沱茶などの固形茶、または七子餅茶に仕上げたもの。 七子餅茶のみ「青餅」または「生茶」と呼び、それ以外の固形茶は「生茶」と呼びます。 固めていない茶葉は「散茶」であり、雲南緑茶となります。つまり「散茶の普洱生茶」は存在しません。

熟茶・熟餅

雲南緑茶を原料に、特殊な微生物発酵工程(渥堆という工程)を経て作られた茶葉。 一般的に日本で販売されている普洱茶はこのお茶です。散茶(固めていないお茶)と固形茶があり、七子餅茶に仕上げたものは「熟餅」と呼ばれることもあります。

保管方法による分類

生茶は普洱茶として評価される味わいになるまで、熟成期間が必要とされています。 そこで、保管方法によって乾倉湿倉の二つに区別されます。 一方、熟茶は微生物発酵のため、すでに製品として仕上がっているため、保管場所が厳密に区別されることはないようです。

乾倉

通常の倉庫。特に手を加えず、風通しの良い部屋(または倉庫)に保管します。 倉庫によっては乾燥棚などを使い、カビなどが生えないように丁寧に保管されます。

湿倉

高湿度高温の状況を人工的に作り出し、熟成を早める倉庫。 約2~3年で乾倉で15年保管した状態と同程度に熟成されると言われます。 湿度と温度の条件は未だに不明ですが、高湿度高温の環境では微生物の活動も活発になるため、熟茶に近い品質になると思われます。

普洱茶バブルマーケット

普洱茶のヴィンテージ

1990年代中頃から台湾および香港で、一部の七子餅茶の価格が異常高騰し、骨董品のように売買されています。 20世紀初め~70年代製造のものが特に珍重され、これらは生茶の乾倉保管タイプと言われます。 多くは香港やベトナム、インドネシア、マレーシアなどの華僑が所有していたもので、大半が雲南の六大茶山(シーサンパンナ地区・易武など)で作られたものです。

易武の元宝茶

高価格で売買されているヴィンテージの七子餅茶が、現在作られている生茶と全く同じ製法であったかは、完全に解明されていません。 そのため、近年製造された生茶が、50年後に現在の「陳年50年物の七子餅茶」と全く同じ状態になるとは言い切れません。 七子餅茶の起源を持つ易武の村で、20世紀初めに作られていた餅茶は、現地の人々に「元宝茶」と呼ばれていました。これは、今の青餅とは違う原料・加工方法で製造されていたことが、最近の研究により明らかになってきています。

生茶と青餅の呼び名

二種類の名前

雲南の緑茶を原料に作られた固形茶を生茶と呼び、七子餅茶のみ生茶や青餅と呼びます。 同じ原料なのに二種類の呼び方があるのはなぜでしょうか。 元来このようなお茶を、現地の人達は「青茶」「青餅」または「生茶」「生餅」と呼んでいたと考えられています。 のちに、青茶は六大分類の烏龍茶と同名になるため使われなくなり、生餅は「生病(病気になる)」と音が重なるため、使われなくなります。 こうして、「生茶」と「青餅」が使われるようになったと研究者の間では考えられています。

青と生の音

また、現地の地方言語には元々表記文字がなく、音のみで言語がなりたっていました。 この地方の言語では「青」も「生」も現地で同じ発音です。 そのため、恐らく当て字で「青茶」「生茶」の二通りができたのではないか、と推測されます。

黒茶の定義と普洱茶

黒茶の定義

黒茶とは後発酵茶であり、微生物発酵によって変化したお茶のことを言います。 しかし、香港・台湾で流行し、最近では中国国内でもブームになっている「青餅」、普洱生茶の乾倉タイプは微生物発酵していません。 つまり、熟成させた、または熟成させるために作った固形緑茶になります。 これは後発酵茶としての黒茶の定義に当てはまりません。

これからの普洱茶

青餅が黒茶の定義に当てはまらないのは、六大分類を定めた頃はまだ普洱茶に関する研究が不十分であったためです。 黒茶の定義自体が、普洱茶のすべてを包括できないものとなっているのです。 今後、どのような形で普洱茶が分類されるのか。それは将来普洱茶の研究が進んでから決定されるでしょう。